「兎の眼」という本 ─特別お題「青春の一冊」
私が母親からその本を与えられたとき、まだ私は小学生であった。
夏休みだか冬休みだかの宿題で、読書感想文を書けという課題が出た。小学生から本の虫であった私だが、どうも感想文を書くような本は見当たらない。その頃は専ら詩集を読んでいたから。
この本のあらすじは、女の新任教師が問題児をたくさん抱えた小学生のクラスをより良くするといった(だいぶと語弊があるが)物語である。ただこの物語の舞台となる小学校はゴミ処理場の近くにあり、小学校自体や登場する子供達も様々な社会問題を抱えている。
当時小学生だった私には衝撃的であった。衝撃的という言葉では言い表せない程強く影響を受けた。ゴミ処理場の近くに住んでいるだけで差別される子供達、その中で輝く生命、何もかも自分が知らない世界で自分がいかに恵まれているかがよくわかった。ただ、それは小学生の自分には少し難しく、読書感想文はズタボロだったけど。
今でもたまに「兎の眼」を読んでいる。この本を開いた瞬間から私の青春はリアルで生々しくなった。小学生の頃のあの衝撃と眩しさを感じたくなったら、いつでも本が待っている。
特別お題「青春の一冊」 with P D MAGAZINE